娘への手紙
井岡護



道や犬が張り巡らされていて吐き気がした
土に虫がいませんので
大きな女中は
苦しそうに老いを振りほどいている
一方僕には
仰向けになって口にするものがある
何度も何度も
聴いているのは罪のない生き方の吸殻


もう当分は人に対して
ああしてだとかこうしてだとか
ここであるという意味のなにか縁取られたものを何回も
何回も指で指し示すことだとか
そうやって未詳であろうとすればするほど
だから


肘の上みたいな車椅子


自由詩 娘への手紙 Copyright 井岡護 2010-06-23 20:47:55
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