揺れる
たちばなまこと

夕暮れ中央道にのり込んだ
明滅するテールランプが湿度ににじんで美しい
すべての初めては心を激しく呼んでくる
生きている
くるしいし高ぶるし泣きたくて笑いたい

センテンス
台詞たちがこびりついて
何度でも揺れられる

ターン
追えない背中たちを
見つめるだけの

負けゲームのやるせなさを逃がしてやりたい
初めての道初めての歌初めての夜の味
多摩川を鏡にして映る世田谷や狛江や調布が美しい
窓の外にもれる歌声と小さな寝息
土曜の日曜未満に皆が集い、帰り、街は静かに眠る
寂しさがエンジンブレーキのようにまとわりついて
また泣きたくて泣けなくて笑いたい

高ぶりで眠れない
どうか
おやすみ
おやすみ
おやすみ
自分の両腕を抱いて
おやすみ


自由詩 揺れる Copyright たちばなまこと 2010-06-23 10:43:21
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