夏至
高杉芹香
2人して落ち込むことがあった週末だった。
「解決したよ」とメールしておいた本日17:03。
数時間後に不意に電話してきて。
2人して落ち込んでいた件については微塵も触れずに
「ねー。ねー。外、見てみて。
夕陽が綺麗だよ。すっごく綺麗。
空が紅色だ、、、。」
ときみは笑った。
たまたま窓辺にいたぼくは
机に乗り出して外を見た。
南向きのぼくの部屋からは西陽をとらえることが出来なかったが
新宿のパークハイアットの窓に真っ赤な夕陽が反射していた。
きみが今見ている夕陽がぼくにも光をくれていた。
ほんとだ、綺麗だね、
笑い返せば
きみは
「今日、夏至なんだよ。・・・知ってた?。」
そう言って無邪気に笑った。
そんなきみに
ぼくはなんだか
ありがとう、と思った。
2人で悩んだ週末を
紅い夕陽が見降ろしていた。
なんてことない。
いつも
ぼくらに起きていることは
なんてことないんだ。
だから
今日のこの1日も
生きてみてよかったと思った。
今年も
僕たちに夏が迫っていた。