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水川史生
鉄屑が降り続くから傘をさす。
Headphoneから流れる音楽に陶酔、している、ゆらゆらと。
正しさを祈りながら、リズムの上を歩いている。それが安定しない直線の歪みであっても、悲しくはなかったからずっと、レインコートをひらめかせて歩いている。Volumeを少しだけあげて、横断歩道の白さを裏返しにしてしまわないように。いつだって夜に代わる前の世界は優しくて、痛かった。さしずめわたしは少女、だったでしょう。青く濡れた月が、空を抱いている。それをあなたは見ただろうか。
点滅をなぞって壊れてしまわないように、Music、ありきたりなPhrase、満たされた影が沈んで消える。
余白のうつくしさをうたっている。
掌を透かす雨粒と、それを飲み続けている不条理と、いくつもの、いのちに、鮮やかな光。
名前をつけるようにTactを振り上げる。指揮者、であった。繰り返し焦がれて、手をのばし指を抱く。祈りは、正しさであったか。
わたしが愛をするひと、で、あれば。
耳の奥でHowlingする。
引き抜いたCordもお構いなしに世界は巡ってしまうから、せめて、出会えばいいと声を張り上げる。
混ざり合えば消えてしまうかな。溶けてしまうかな。
赤さに焼かれながら死んでしまうかな。
酷く透明な宣誓だけがゆるやかにすべてに慈愛を捧ぐだろう。
言葉を、Lyric、描くことを忘れたことはなかった。痛々しさに泣き崩れても、何度嘘を飲んだとしても。溢れたなら光れ、悲しみが昇華されるように。
エンコードだから伝わらない。はやるのは心音だけで、鉄屑が降り注ぐ街を歩いている。
Dotを染め上げて、Song、カラーを忘れるな。
走り去れば本物だっただろう。遠く届くことさえ叶えば。涙がいとしいものでありますようにと願った。あなたが、あなたが聞いて、優しさと抱き合えるように。紛れのない円形、遠目から見る世界がいかに穏やかに甘いものであるか。
朝暮れの薄い眠りに静寂の、唇を落としては浮遊する。赤錆に埋もれた記憶の、傷から覚まされる恍惚、その時、わたしは少女だった。
あなたが雨に眩んで、鉄屑に掻き消えた時。わたしは少女でしか、なかった。
だから世界よ正しく優しくあれ、と。
あなたに溢れることがないように。
正しく、優しくあれ。