こんにゃくゼリー革命
鵜飼千代子

「こんにゃくゼリーの会 発足!」

ある日突然
それはひとつのテロ、いや革命だった
「老人と子供にはあげません」
と貼紙をして
こんにゃくゼリーたちが檻の中に閉じ籠ってしまったのだ

老人たちは愕然とした
子供たちは泣き叫んだ
檻の周りをゆったりと
檻の周りをぐるぐると
歩いたり走ったりガタガタと揺らしたりしながら

「死ぬことを前提に話をしているのかー!!!」
「ちゃんと、よく噛んで食べますから〜!」
 etc・・・

いくら言葉を尽くしても無駄だった

途方に暮れて座り込む子供たち
老人は畑からスイカを採って来て食べさせた
泣き出しそうな顔でかぶりつく子供たち
老人はスイカの種飛ばしを教えた

またある時は
海からテングサを採って来て寒天をつくり
「あんみつを食べよう」と提案した
子供たちは大喜びであんこを炊いた

(同時に)「こんにゃくゼリーにこだわり過ぎていたかもしれない!」
     「こんにゃくゼリーにこだわり過ぎていたかもしれない!」

老人と子供は「老人クラブと子供会」を発足
時間や天気、季節に合せて遊んだ

ずいぶん静かになったと外を見て驚いたのはこんにゃくゼリーたち
慌てて檻から飛び出した

「ハート形にしましたので喉に詰まりません。どうぞこちらへ」

もう子供たちの胸には新しい夢が膨らんでいたのだ

「いつか大きくなって、こんにゃくゼリーをタピオカみたいにストローで吸い込めるくらいのサイズになったら、おじいちゃんたちに習ったスイカの種飛ばしのように、こんにゃくゼリーをピュンピュン吹き出して飛ばすんだ」

やがて空は黄昏れる
そしてまた陽は昇る
季節は何巡も訪れて

はしゃぐ子供たちに
「たまにはこんにゃくゼリーも食べようね」
小さく呟くと、老人たちは微笑んだ



自由詩 こんにゃくゼリー革命 Copyright 鵜飼千代子 2010-06-19 09:59:41
notebook Home 戻る