童顔
梶谷あや子

わたしたちの考えた春というのは
玄関すみでは
魚のかげがうごめく4時半のことだった
羽のあるもののように
わたしもそれの中に入ったり
あるいは
絵を描いている
ゼリー状の
青いこれがわたしの夜
あなたの眼に
ほころんで倒したインク瓶
のひかる環っか それからギター
鯉は祖父が飼っていたという
半身をいずれわたしにも
さらう清冽さで泥が指さきにゆきわたり
母が帰るころだろう
そろそろ餌をやらなければいけない
と思いベランダへ出ると
ざぶざぶと布団がいぶされていて
青いゼリーの散乱が
また関節の付け根に潜っていったのだ





自由詩 童顔 Copyright 梶谷あや子 2010-06-18 23:54:00
notebook Home 戻る