ジョニ—
くろきた

一昨日の夜
近所の ジョニーという名のパピヨンが
久方ぶりに 姿を見せた
よたり よたりと
おぼつかない足取りで あるいていた
飼い主の 笹本さんは
いつも つけているはずのリードを
今日は つけていなかった
なんで? ときくと

もう 目も見えないし耳も聞えないのよ

と 教えてくれた

鼻を ふんふんといわせながら
ふらふらとあるく ジョニーは
何時かの冬に 一緒にコートにくるまった犬とは
思えないほど 年老いていた

しばらくすると ジョニーは
私のほうへ あるいてきた

迷わずに まっすぐ

私はしゃがんで ジョニーを待った
ジョニーは 私の差し出したてに
鼻をぴたりとあてると あごを乗せてきた

あごの下をかりかりと 撫でてみるとそこには
痩せてたけど 何時かの冬の日に
コートのなかで感じた 体温があった
いつもは 私が撫でていると
もぞもぞと 居心地が悪そうにしているのに
今日はじっとしていた

しばらく 撫でていると
そのまま また
よたり よたりと
あるきはじめた 

私は
なんだか その背中が
浮かんでいるように見えて


これが最後かな と

静かな気持ちで おもった












自由詩 ジョニ— Copyright くろきた 2010-06-17 20:54:20
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