夜と姫
木立 悟






手つなぎ鬼
手はなし鬼
追う声を呑み
誰もみな鬼


明るい網戸
羽の失い虫
みどり飽和
みどり喰む虫


見つかりません
見つかりません
あなたは順路に
見つかりません


壊れた川辺は無く
壊された川辺ばかりがうたい
水草のかたわら
離れない羽


傘の下でさえ
めまぐるしく変わる雨の雨
捕えられぬ色
飛び去る色


舟の虚ろに降りつもる
錆の群れ 暮れの群れ
音のない
火の花の群れ


紙に割られ
糸に割られ
息に割られ
かろうじて 陽の上に在り


ほのぐらさが
ほのぐらさを知らぬまま
明るい息をつないでいる
姫の泡 姫の泡


流れは流れに流れては
空を頂にも底にもする
銀は銀を去る
かけらさえ振り向かぬ


標は水に蝕されて
路という字を避ける羽
陰に群れ 陰に群れ
緑に川に 非に群れる


姫は変わらず姫の光で
生まれつづける鬼を照らす
あなたはあなた以外ではないのだから
骨の火の穂を水平に 自らへ自らへ向けるのだから


暗い風 わずかにかがやき
鳥の声
雨やどりの星
うたい見つめ うたいつづける



























自由詩 夜と姫 Copyright 木立 悟 2010-06-16 15:06:19
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