螺旋階段
nonya
モラトリアムの
透明な壁伝いに歩いていたら
いつの間にか
歪な円運動を繰り返していた
足を上げると
そこに階段が出来上がり
振り返れば
過去が螺旋状に積み重なっていた
同じ色合いの毎日を
右目で流し見ながら
左回りで季節を巡る
次第に高くなる目線は
粗雑で青臭い地上波を
やがて捉えられなくなるのだろう
一段上る度に
少しずつ明らかにされていく
しがらみの絡み合う路線図
二度乗り換えるだけで
君の街へ行けることに
今頃やっと気がついた
一段上る度に
街のざわめきは遠ざかり
地平線は後ずさりする
何かが見えたふりをして
強ばった唇の端に
消え入りそうな微笑を灯す
いつかは必ず
踏み外す
下ろした足の先から
暗黒に食い尽くされる
それでも その日のために
上り続ける
震える足の先で
虚空をまさぐりながら
一歩ずつ
一歩ずつ