パキラ
草野大悟

男はたぶん たどりつけない旅の疲れなど
パキラのように忘れているが
女はいつも 負けず嫌いで
瞳に夕陽の海をきらめかせている

なつかしい鉛筆が転がりだすころ
夜は 夏草のあの場所へ走りはじめ
いくつもの丸い海が 青く生まれる

万歩計が もういいよう 歩きたくないようと泣いているテーブルの上で
黒いノートがハートに笑う朝
雀は光をついばみながら
向日葵のまえで 犬のようににこやかな尻尾をふっている

女の額から朝陽が昇ってくるころ
街が呼吸をはじめる
男はたぶん たどりつけない旅の疲れなど
パキラのように忘れてはいるが


自由詩 パキラ Copyright 草野大悟 2010-06-14 22:58:53
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