パキラ
草野大悟
男はたぶん たどりつけない旅の疲れなど
パキラのように忘れているが
女はいつも 負けず嫌いで
瞳に夕陽の海をきらめかせている
なつかしい鉛筆が転がりだすころ
夜は 夏草のあの場所へ走りはじめ
いくつもの丸い海が 青く生まれる
万歩計が もういいよう 歩きたくないようと泣いているテーブルの上で
黒いノートがハートに笑う朝
雀は光をついばみながら
向日葵のまえで 犬のようににこやかな尻尾をふっている
女の額から朝陽が昇ってくるころ
街が呼吸をはじめる
男はたぶん たどりつけない旅の疲れなど
パキラのように忘れてはいるが