渋谷センター街のひと
恋月 ぴの
久かたぶりに訪れた渋谷センター街
取り壊し中の建物とかあったりして何となく余所よそしさを覚える
平日の昼間ってこともあるのだろうけど
チーマー、ガングロな人びと
そして神話の国の神話な街
ベルリンの壁が崩壊したのは二十一年も昔だっていうのに
懐かしさは何年も前の出来事をまるで昨日のように蘇生させるのか
殲滅せよ!
渋谷系と持て囃された街並みでさえも
結局のところ人々の欲望を満たせるか否かで総ては決まり
陸サーファー、デコメな人びと
そして微笑みを忘れた微笑みの国
電池切れの携帯を耳に当てれば
消費こそが美徳だった頃の賑わいを知る
幾重にも重ねたアイシャドーで少女たちが覆い隠したもの
袖触れ合うも他生の縁と
後戻りは許されない階段の一段一段に
刻まれたのは
やるせなさと気だるさと
君の右手はあの壁を打ち砕くハンマーを果たして握り締めていたのか
オープンカフェのテラスには今も昔も恋人たちの姿
そしてJR渋谷駅ハチ公口改札脇に貼り出された連合赤軍の指名手配写真は
何を追憶の瓦礫から引き摺り出そうとしているのか
総括せよ!
愛よりも大切なものなんかないくせして
目深にかぶったベースボールキャップで涙を隠す