ただの人
izumi

何も持ってない私
ただの人
誰からも何も言われない
ただの人
呼吸している
ただの人

みんな、そう思えばただの人になれる。
考えも発言も行きたいところも自分次第。
なのに、人は大人になると自分を狭い部屋に閉じ込める。
そこは行くべきところなのか、行きたいことろだったのかも判断できる状態でないのに。

人はそこで苦しむ。
すぐ逃げ出す人もいれば、じっと無表情で我慢する人もいる。

人はそこで金をもらい、あってもなくてもいいような書類の山で生活する。
その中でも運がいいのは一握り。あとの残りは紙と格闘しながら人生の大半を終える。

運がよければ
地位、名誉が与えられ
赤い絨毯の上で過ごすことになるだろう。
そうなったら
ただの人ではない。
それを嬉しがったり自慢する人もいるだろう。

でも、そんなことは空の頭を満たす酒。
気取ったただの人だ。
笑い話じゃない。
こういう人はウヨウヨいる。
海辺の岩場や堤防にいる気持ち悪い虫ケラのように。

気を付けなければ食われてしまう。

私は食われてバラバラになった。
でも死んではいない。
今日も満点の夜空と
遠い国からやって来た
潮風の中で
ただの人になる日を待っている。


10.2.22


自由詩 ただの人 Copyright izumi 2010-06-14 13:13:21
notebook Home