炭酸水と夏の気配
木屋 亞万
自分の髪が煩わしくなるとき
夏の訪れを感じる
いっそ丸坊主にでもしてしまおうか
と思っては、躊躇う
長袖に隠れていた腕が
恥じらいながら顔を出し
外気に近づいた脇が
風の気配にスースーしている
背中にじっとり汗が出る
脇にじんわりシミが浮く
額がべたべたし始めて
手洗いで腕まで洗う、水のしあわせ
朝と日暮れに窓を開ける
昼間は外に出たくない
翼があれば北へ飛ぶのに
今日も地べたを歩くしかない
喉元が暑さを忘れられずに
刺激を欲しがる、苦しそうに
つめたい爆発を求めて
アスファルト砂漠のオアシスへ
春の気温の室内で
夏の気配の外を眺める
ガラス越し、道行く女の長い髪が
風に靡いて、しばし熱さを忘れる六月