マネキン
やや

ベッドの上に、君の腕を
ケースから出して一緒に眠る
腕を組んで、胸に抱いて
手を繋ぐのが一番しっくり
年中暑がりだったから
サーモグラフィ、君だけ赤色

翌朝起きたら、寝ぼけたままでも
君の頭を取りだしキスする
愛が何だか分からない
お母様にも聞きそびれたまま
短いくせ毛をくしゃくしゃ撫でたら
眠ったまんまで小さく唸った

毎晩ご飯を食べた後
君の胸を出し耳を押し付ける
鼓動は時計にはなれない
君の心臓はゆっくり強く
とん、とん、とんとんとんとん
時間と私に刻印を押す

愛がなんだか
愛てなんだろう
愛はなんですか
分からない

ケースを開いて
愛を探す
君の顔に聞く
愛はどこですか

腕を取り出す
足を取り出す
胴を取り出す
愛はどれですか

まぶたをめくって
お腹を覗いて
頭を叩いて
愛はどれですか

愛が何だか分からない
お母様だって首を傾げてる

君の唇に耳を近づけ
愛の居場所を、聞いてみる
私の胸に君の手押し付け
これは愛ですか
聞いてみる

離したくはない、無くしたくもない、壊したくもない、

愛はこれですか
愛は何ですか
マネキンの君は教えてくれますか

私はマネキン
教えてくれますか。


自由詩 マネキン Copyright やや 2010-06-11 02:33:19
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