ドラム缶の、ゆれ
プテラノドン

ドラム缶の中で羽化した
ボウフラたちが
シーツほどの大きさに広がって
街灯におおいかぶさる。五時三十七分
長距離トラックのヘッドライトに
体当たりすることで
火花を飛び散らせた。

男は運転席の後部で脱皮する
丸められた煙草の空き箱が床に散乱していた
少しだけ下げられた窓から
運転手の吐息が路上で漂い
ガードレールを溶かす。それは砂利のように粉々になった
疲労感とは一線を画すが、ともに側溝に流れていく。

水溜りの上澄みに広がる光の荒野。
記憶を失ったように
泳ぎ続けるアメンボ。
ドラム缶に浸かった月もまた、
無関係とは言い難い息継ぎを行って
対岸を目指すことでしょう。


自由詩 ドラム缶の、ゆれ Copyright プテラノドン 2010-06-10 23:05:56
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