狂薫
藤原有絵

満ち足りているのだと
わかり易い言葉に暗号をたくさん隠して
心の内を告げるその奥で
もう 今すぐに!
わたしのいない未来を
突きつけてあげたいと
恭しくその頬に指を添える

とろけそうな言葉には
まるで壊れているかのような愛が
親しみを持って寄り添っている

想いで満ちた日常が
夢のように当たり前に続くなど
そんな事はある意味不自然であるが故
害のない悪意が綻びみたいに
胸の奥から突き上げてくるのだ

無邪気な笑顔で
わたしを抱きしめる
彼の人が

心愉しくて
だからこそ泣きそうなわたしに
健全な言葉をなみなみと注いでくれる
邪気の無い幼子のように頭を撫でたい人は
子供のような顔をした女を知らないのだろうか

そして
其の言葉が
たおやかに歪んでわたしへ落ちる

壊れたまま咲け


狂った甘さで薫れ





自由詩 狂薫 Copyright 藤原有絵 2010-06-10 18:01:48
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