狂薫
藤原有絵
満ち足りているのだと
わかり易い言葉に暗号をたくさん隠して
心の内を告げるその奥で
もう 今すぐに!
わたしのいない未来を
突きつけてあげたいと
恭しくその頬に指を添える
とろけそうな言葉には
まるで壊れているかのような愛が
親しみを持って寄り添っている
想いで満ちた日常が
夢のように当たり前に続くなど
そんな事はある意味不自然であるが故
害のない悪意が綻びみたいに
胸の奥から突き上げてくるのだ
無邪気な笑顔で
わたしを抱きしめる
彼の人が
心愉しくて
だからこそ泣きそうなわたしに
健全な言葉をなみなみと注いでくれる
邪気の無い幼子のように頭を撫でたい人は
子供のような顔をした女を知らないのだろうか
そして
其の言葉が
たおやかに歪んでわたしへ落ちる
壊れたまま咲け
と
狂った甘さで薫れ
と