感触
石瀬琳々

うす青く空にひらいたドアの隙間から
輝く雲が覗いている
今も遠くはなれて君をおもう
見えない手のひらで
君をそっと抱き寄せる
(いつの日もよすがを探している)
(途方に暮れて)
あるいは意味などないにしても


鮮やかに芽吹いた緑の道を歩く
また一歩踏みしめる
残してきた春をいとおしむように
小指にほんの少し
草の汁を擦り込んで
(誰もが知っているなつかしさで)
(頬に触れる)
それはあの日の夢にも似ていた


いつか歩いた
(そして 星が瞬く)
線路の匂いを嗅いだような気がして
そして振り返る
ためらいがちな 風
風よ その感触を知っている




自由詩 感触 Copyright 石瀬琳々 2010-06-09 13:40:16
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