水の獣
ふるる

雨の生糸で編んだ夜
街の灯りのビーズ揺れ
傘の上では獣の足音
軽やかに
六月の匂い 
たてがみやしっぽに乗って
運ばれる

鈴蘭を揺らす雨粒は
小粒のおいしいドロップス
だどもあの娘は青白いほっぺを濡らして
二筋の小川とめどなく
なぐさめようもなく ただ傍に
ひっそりといたんだっけ

雨で織られたタペストリイ
テエルランプの赤いリボン
縫いつけよか
若葉の匂いも染み込ませ
鈴蘭りんろん香る音
のろのろ歩きのまいまいも
あの娘に捧げてみましょうか

もういいの、いいの、いいのと
つぶやく声が聞こえます

水の獣はやがて去る
雨がようやく止みかけて
街は暁に染められて
あの娘のほっぺに薔薇つぼみ
ふんわり咲いたその頃に


自由詩 水の獣 Copyright ふるる 2010-06-04 23:19:57
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