空色の損、ソーダ水
あ。

噛み付いた歯の先から、刺激


微笑みの国タイランド
とにかくひどく蒸し暑くて
立っているだけで背中を汗がつたう
ホテルの側で借りた自転車には
鹿児島県の防犯登録証が張り付いていた


アユタヤ
埃っぽい大きな道の両側には
同じような形の遺跡が延々と続き
風景を動かすには
わたしはあまりにも小さく
自転車はあまりにも非力だった


よく知っているコンビニの看板が見えたのは
ティーシャツが汗を吸いすぎて重くなり始めた頃
大きな7の数字が赤く光っている
ペプシコーラは高かったので
見たこともないソーダ水を一本買った


店を出るとすぐにふたを開ける
甘すぎる味が口内に広がる
ふと、
噛み付きたくなった
液体を、
噛み千切りたくなった


もう一度口に含み
間髪入れずに歯を立ててみる
刺激に、まぶたが閉じられ
空が、逃げた


山の見えない空は敷き詰められて
つかれきった身体はもう少しで
とろとろと溶けていきそうだった
だけど、
強い炭酸はわたしを固形化し
もう一度自転車にまたがるしかなく
それでも、
目に映る世界は既に十分美しい



嗚呼、とても
とてもいい天気だ


自由詩 空色の損、ソーダ水 Copyright あ。 2010-06-03 19:48:44
notebook Home 戻る