宇宙のものまね
吉岡ペペロ

この悲しみはひとにやさしくなれる

いちど別れた女となんねんかぶりに会った

肌をふれあわせる以外のことを夜通しした

この女は最愛だったが

ふたりで制度のなかにくるまれることはなかった

朝また会うことを約束して別れた

女は電動自転車で家にかえり

こちらは新しいホテルで3時間だけねた


朝のひかりをさえぎる歩道の樹木の葉から

人生への肯定をもらいながら

出発じかんまでベンチに座った

そして駅までふたりで歩きだす

女は電動自転車に乗りながら

背広の腕をつかんで自転車とじぶんを支えていた

横断歩道で別れると女がするすると遠ざかっていった

ほんとうは祖国で暮らしたかったのに

外国の片田舎に暮らす貧しい男の気持ちが分かった

どうにもならないことは自然のお話しなんだ

運がわるいわけでもない

悪意があるわけでもない

それはぜんぶ自然のお話しなんだ

みんな宇宙のものまねを

無意識のうちにしているだけだ

きのうふたりで会話したことを思い出していた








自由詩 宇宙のものまね Copyright 吉岡ペペロ 2010-06-03 14:50:19
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