宇宙のものまね
吉岡ペペロ
この悲しみはひとにやさしくなれる
いちど別れた女となんねんかぶりに会った
肌をふれあわせる以外のことを夜通しした
この女は最愛だったが
ふたりで制度のなかにくるまれることはなかった
朝また会うことを約束して別れた
女は電動自転車で家にかえり
こちらは新しいホテルで3時間だけねた
朝のひかりをさえぎる歩道の樹木の葉から
人生への肯定をもらいながら
出発じかんまでベンチに座った
そして駅までふたりで歩きだす
女は電動自転車に乗りながら
背広の腕をつかんで自転車とじぶんを支えていた
横断歩道で別れると女がするすると遠ざかっていった
ほんとうは祖国で暮らしたかったのに
外国の片田舎に暮らす貧しい男の気持ちが分かった
どうにもならないことは自然のお話しなんだ
運がわるいわけでもない
悪意があるわけでもない
それはぜんぶ自然のお話しなんだ
みんな宇宙のものまねを
無意識のうちにしているだけだ
きのうふたりで会話したことを思い出していた