夜めぐる夜 Ⅴ
木立 悟





絵の具の年譜
金の闇
渇ききった既視の風に
名を呼ばれては遠去かるもの


暗い霧をつなぐ虹
ところどころ消えながら
雨を照らし
雨を鳴らす


岐路の前の影
すぎる蒼
鉛の智恵が去り
鐘は輪を描く


海に接する荒地の
岩をあがめている
白と黒の集まりが
くりかえしくりかえし浪を踏む


夢の切れはしが集まり横たわり
誰も居ない場所から半身を起こす
かがやく器械の雨
硝子玉の暮れ


ふたつに分かれる前の季節が
まばゆいものとすれちがう
手のひらには曇
手のひらには海


道のはたをゆく
流れの音
まるい虹の針
折れては折れては降りそそぐ


無人の帰途
夜の陰の夜の群れ
水と空の跡
水と空を呼びつづく



























自由詩 夜めぐる夜 Ⅴ Copyright 木立 悟 2010-06-02 20:00:03
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