ボート
はるな


はだざむい夜は 皮膚をつないで朝をまつ
雨のふる午後は 髪をぬらして屋根に走る
わたしたちは すでに 与えられている

赤く灯る 血のような夕に

ほらみてごらん
一直線に祈りが走る

傷跡も 傲慢も 凌辱も 悲哀も
一直線に

ひとりで震える真夏が来るだろう
つなぐ皮膚も 屋根も見つからないかもしれない

それさえも
わたしたちに同じように与えられた糧のひとつなんだよ

ほらみてごらん
見も知らぬ誰かが
見も知らぬ誰かのために
祈っている

そら
雨や 赤や 日や 蒼や
そこらじゅうに
祈っている

わたしたちは
いま 同じ屋根のしたに辿りつくだろう
二艘のボートが もやわれるように



自由詩 ボート Copyright はるな 2010-06-02 01:34:11
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