ドアの内側の広い世界で
なき
女であることを楽しむために赤いルージュを持ち歩く
本来の目的を果たせぬまま、ケンタッキーに向かっている
うじうじの覚悟がなかなか決まらない、甘えてばかりの窓の内側
つるつるの腕や足を自分で触って慰めて、切なさばかりで頭がいっぱい
体中の空白が水で満ちると、視界がゆらゆらゆらゆら揺れる
風に六月が冷たく匂って、寝具のカバーを濡らしている
真っ暗な部屋の隅で体育座りの、細い光を遮った私を安心させるドアの音(ばたん!)
自由詩
ドアの内側の広い世界で
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なき
2010-05-30 09:55:35
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