RED
三田九郎
呼吸するみたいに愛してるとかしてないとか言われても
表情の愚かさが味覚に残っていて忘れらんない
惜しいシュートが何度も何度も何度も映し出されてた
でもあの瞬間の落胆はあの瞬間にしかなかったものだ
嗚咽と吐息が混濁した抱擁を夜通し続けても
君の告白にもその身体にも息づかいにも動揺を覚えなかった
解説者が勝負の行方や敗北の理由について解説してた
精神論で何もかも片付けてた、敗戦後の儀式みたいに
吐き出しきれないため息が身体に充満して窒息しそう
倒れたグラスからテーブルに広がり絨毯にしたたり落ちる
ワインの赤に私達の将来を重ねてみた
君と私の血液の色彩ってどれだけ違うんだろう
今度見比べてみようよ(ちょうど良いナイフ持ってる)
完敗の報せを繰り返すニュースショウの傍らで
赤い糸をつなぎ止めたい淑女になる
君がくれたこの味を値踏みしながら
片方絶命するまで添い遂げるって仮定してみた
時々君の身体に私のそれを任せるのは
得意だし嫌いじゃない
ただ
ささやけばささやくだけ
私が近づくと信じている君のその横顔に
もう いま
嘔吐したくて仕方がなくて
衝動に負けそうで
この瞬間の動揺だけは隠せそうになくて
敗戦後の儀式みたいに
今夜も君に抱かれてみる