分裂
デラシネ
空が手招いて、大地が手招いて、 引きちぎれ、ぶっとんじまった私は、
私は私は私は・・・と口をぱくぱくさせながら 、
「お前は誰?」と、やけに希薄な空に問いかける。
言語は共通ではなく、私に見える空は共通ではなく、
私は私でもなく、あなたはあなたでもない。
そんなありきたりの混乱が、やけに悲しくなって、
「信じられるものは愛せるものはないか」と、隣の人の目を覗き込む 。
映し出された顔が、よく似ているな、と、鏡の世界に迷い込み、
私しかいない、誰もいない、寒気の妄想にかられながら 、
「世界はひとつ 愛なのです」 と、愛の意味すらわからなくなった頭に、
嘲笑のような訓示を響かせる。
空が響いて、穴に穴が空く、穴に穴が穴に穴が、穴が穴が、穴に、
xxxxxxxxx生きているものが、生き物が見当たらないxxxxxxxxxx
迫りくる機械音の前に、痛みもなくころがる、見覚えのある、私の首、
冷蔵庫の中で腐りゆく、忘れて忘れられた、愛と憎しみの塊が、
「どろどろ」と音をたてながら、何かを待っている、私を待っている、
行かなくちゃ。
私は行かなくてはならないから、
忘れなくてはならない、思い出を、忘れなくてはならない、愛おしさを、
たましいにコンクリートを流しこまれて、私は死ぬだろう。だから。
忘れなくてはならない、忘れることができない、私は、忘れることができない、私の、
恐怖。
道連れの、恐怖。
愛しい娘が男が母が、いっしょに、冷たく冷たくなってしまう、恐怖。
恐怖。罪と罰。加害と被害のスパイラル。
私は私を、守ることができなかった罪と、罰に、身悶えしながら叫びだす。
私は戦わなくてはならない壊せ全ての無、
私は逃げなくてはならない壊せ全ての無、
私たちは戦わなくてはならない壊せ全ての無、
私たちは逃げなくてはならない壊せ全ての無、
叫びながら走り出す、壁にぶつかり床を這う、無機質なものが憎い。
テレビを投げ壊しステレオを投げ壊しパソコンに殴りかかり携帯を折り、
冷蔵庫の扉を開けたら、食物たちが笑ってた。
わけがわからない、わけがわからないけど、泣いてはいけない気がするから、
泣かずに、泣かずに、食う。
ほらあたたかいでしょう? 悲しいことは何もない。