ブリングル御田詩集『次 曲がります』
渡 ひろこ

凝縮された思いが風船のように膨張して、弾けた飛沫が言葉になった。
そんな鮮烈なイメージが浮かんだ。それほど思わぬ角度から言葉が繰り出してくる。
凡庸に収まらない突き抜けた斬新さが、この詩集の魅力だ。

看護婦が差し出すその空豆のような形の皿に/わたしの中からカキダされたものが砂粒のように積もっていく。//
【ヘンジャギ】『家に火をつけた』/?よるを?/(小4の秋)【ハンジャギ】《しゅぼんぬ》(「迷子」)

次はどのような展開になるか、引き込まれていく言葉のマジックに
読み手はつい謎解きをしたくなってしまうだろう。
思い切りの良さが小気味いい。勿論、言葉のラビリンスを廻るようなフラクタルなイメージの作品ばかりではない。

身をよじり/絞るように/わたしは子供を産み直す/ぎこちない背骨は固く/わたしの産道にぎちぎちとひっかかり/
固まった骨達が乾いた音をたてて/折れていくのがわかる//ぱきん/ぱこん/こきん/きりん/(「さんどう」)

この詩集のもう一つの特徴でもあるオノマトペが、効果音として響く。
震撼とさせる迫力があるが、「子供」を「言葉」に置き換えると、
おそらく言葉を推敲している様を描いたのではないだろうか。
五感に響く謂わばブリングルワールドの震源地を見た気がした。
詩集タイトルは作品にはない。正に作品ごとにどう曲がっていくのか、
新感覚を期待して読み進める新進気鋭の第一詩集。ぜひご一読をお勧めする。



『詩と思想』6月号掲載




散文(批評随筆小説等) ブリングル御田詩集『次 曲がります』 Copyright 渡 ひろこ 2010-05-28 19:31:57
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