別居婚志願
森の猫

兄夫婦が別居婚となった

義姉はひとりマンション住まい
兄は 母と同居

20数年前
見物人も出た
ピンクの豪邸は
人手に渡った

あぁ またやられた

兄といっても
双子の兄
同じ年

兄はいつも
あたしのやろうとしていることを
いとも安々と やってしまう

いつも事後報告
結婚もそう
子どもが先だった

そして今度は
別居婚だ

母はひとりさみしく
暮らしていたから
さしたる反対もなく
承諾

いそいそと
兄の食事作りにいそしんでいる

うちの夫婦が 一緒に住もうかと
申し出たときは
あんなにごねたのに

やっぱり 兄
兄はいつも
あたしの好きなものを
もっていってしまう

好きなように
生きても 母から文句を
聞いたことがない

聞くの嫁のことばかり

あたしには
別れるなと
再三 口うるさく
言い含めてきた 母

すんなりと兄の
別居婚を承諾した

ショックだ

母がしあわせなら
それでいいが

あたしの
帰るところは
もう なくなった

母名義の家を
譲るとまで
言われていたのに

欝で働けない
あたしは

妥協案で
家庭内別居を選んだ

リビングの狭い
都内のマンションは
息が詰まる

あと 何年で年金の
掛け金はおわるのだろう

それまで待つか

出るか

6畳の和室が
唯一 手足を伸ばせる
あたしの空間

断じて
志願

別居婚


自由詩 別居婚志願 Copyright 森の猫 2010-05-27 01:39:02
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