さながら
瑠王

九月の風に脅かされ
腐った林檎のような下顎は
コロンと落ちる

母体はもはや語る術もなく
問いかけ半ばの下顎は
無言のむくろさながら積み重なり

悲嘆に暮れる人々はそれでもやっと掻き集め
使い道のないそれらを
跡形もなく絞り出し
缶ジュースにする

風の強かった年ほど
届く段ボール詰めの
それらは亡き人の手紙であるように
または戦死通告書のように
甘さよりも酸いが引き立っている




自由詩 さながら Copyright 瑠王 2010-05-24 23:22:59
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