パレード!
ねことら
パレード!20歳になった。今日は特別な日。手首に巻き付けた包帯は、リボンに見えなくもない。飛び降りの前みたいにわくわくしてドアの前に立つよ。ノブに張り付いた指紋は陽でひかってきれい。これまで何人このドアを開けたんだろう。かちりと硬い音をさせて、わたしは世界に接続されました。
とたん、空は蛍光色のピンクだ。きれいなサツキバレだ。街灯はびかびか青や紫に瞬いて伝染病みたい。自動車はぜんぶスクラップだ。踏み台にしてそのうえでラブだのハグだのうたってる沢山の女の子たち。笑いすぎてがしゃん、て首が落ちたりするけど半分機械でできてるから大丈夫。ずんずんスニーカーですすんでく。つけた足跡からむくむくと幹の太い薔薇が生えていくので楽しくてでたらめにスキップする。
バス乗り場に着いた。バスの代わりにサイやライオンがならんでる。のんびりいきたいのでサイにしよう。首にまたがると、もfほffへ、とかなんとか、不思議な声でサイがわらった。わたしにまたがられて興奮してるのかもしれない。わたしも似たような声でわらおうとしたけど、肺がかすれてヒーヒー甲高い音がしただけだ。くやしい。
街はビルばかりだ。どれも朽ち果てて墓碑みたい。ペイントしよう。オレンジや緑、青、赤、原色に近いほどいい。そんな法律をつくろう。独りで採決して、街中に貼り紙してまわろう。
噴水前だ。とびおりてショーウィンドウまで駆けだした。ガラスに張り付いて目を凝らす。サファイアのネックレス。とびきり大きいやつ。わたしはこれを自分のプレゼントにすると決めてた、ずっとまえから。店員さんがでてきた。くしゃくしゃの灰色の髪、ぶあつい黒ぶち眼鏡の男の子。耳まで熱くなるのを感じる。きみのなまえをなんども妄想した。ユウ、アキラ、ナオ、シンヤ。どれもきみに似つかわしくない。きみはなまえのないそんざいであってほしい。わがままかな。
ネックレスをきみにかけてもらってちりちり幸福のびょうきにかかってるよ。いま0時0分0秒。夕日はどんどん楕円していってぱっと星空になった。パレード!うるさいくらいおめでとー、って星が降ってるんだ。いつかバンユウインリョクの法則で加速して、君にキスしよう。