ドーナツ
izumi
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい。
私の口癖 ごめんなさい。
すいません
すいません
すいません。
私の口癖 すいません。
私はボールに入れられて
かき回されて
それから誰かの手でグイグイとこねられた。
私はドーナツの形になった。
私の中には輪っかがある。
私は薄黄色の優しい生地だった。
ごめんなさい と すいません は
仲良く油に溶けていた。
私は深いフライパンに入った
熱々の油の中に放り出された。
ごめんなさい と すいません の間で
もみくちゃになった。
私は少し焦げた。
ごめんなさい と すいません は
私の中身を満たした。
真ん中にあいている輪っかだけ残して。
こんなはずじゃなかったのに。
こんなはずじゃなかったのに。
悔やんだけれど私が言えるのは
ごめんなさい と すいません だけ。
もう以前の粉と牛乳と卵と砂糖に戻れない。
私は皿に並べられた。
そして食べてくれる人を待っている。
10.2.7