ドーナツ
izumi

ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい。
私の口癖 ごめんなさい。

すいません
すいません
すいません。
私の口癖 すいません。

私はボールに入れられて
かき回されて
それから誰かの手でグイグイとこねられた。

私はドーナツの形になった。
私の中には輪っかがある。
私は薄黄色の優しい生地だった。

ごめんなさい と すいません は
仲良く油に溶けていた。

私は深いフライパンに入った
熱々の油の中に放り出された。

ごめんなさい と すいません の間で
もみくちゃになった。

私は少し焦げた。
ごめんなさい と すいません は
私の中身を満たした。
真ん中にあいている輪っかだけ残して。

こんなはずじゃなかったのに。
こんなはずじゃなかったのに。
悔やんだけれど私が言えるのは
ごめんなさい と すいません だけ。
もう以前の粉と牛乳と卵と砂糖に戻れない。

私は皿に並べられた。

そして食べてくれる人を待っている。



10.2.7


自由詩 ドーナツ Copyright izumi 2010-05-24 15:30:10
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