虫取り網
小川麻由美

憂鬱さも手伝ってペンを持ちノートに向かう
何かが滲み出てくるようにペンはゆっくり動こうとするが
書き始めるきっかけとなった憂鬱さが
邪魔をし始めた

ぼやーっと壁に掛けた絵を観ていると
平面の世界であるはずの絵に描かれた
アゲハチョウが背景を捨てて
抜け出してくるように感じた

私は虫取り網を用意した
待てど暮らせど
アゲハチョウはピクリともしない

それは当たり前のことだと思いなおし
また文字をしたためることにした
なぜか進まぬペンを手にしたまま
またアゲハチョウを観る


自由詩 虫取り網 Copyright 小川麻由美 2010-05-23 17:09:07
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