6月
吉岡ペペロ
街路樹の葉はひらべったくなっていた
この街にはもう新緑はなかった
木々や草が精子のような匂いを送り出していた
女が買い物にいくのを女の部屋で留守番した
低層階だから木々の先端がガラス戸ごしに見えた
そいつを寝転んで見つめていた
枝葉が風に揺れていた
曇り空だった
無音の不穏が胸に張りついていった
女が急いだような感じで戻ってきた
なにか手伝うのも嘘くさかった
ここから去ることばかりを夢想した
時間がまどろっこしくて重かった
それを掻き分けるように女のつくった飯を口に入れた
じぶんのやさしさが疎ましくて嫌になった
街路樹の葉はひらべったくなっていた
この街にはもう新緑はなかった
木々や草が精子のような匂いを送り出していた