夏のゆらぎ
ベンジャミン

遠くの景色が色あせて見えるのは
きっと目の錯覚ではないのだと
あなたは言う

僕はその意味がわからなくて
朝から晩まで遠くの景色を眺め続けた

そうやっているうちに
五月が終わろうとしている

僕はそんな移ろいにも気づかずに
朝から晩まで遠くの景色を眺め続けた

五月がそうやって終わろうとするのと
それをただ眺めている僕を見て
あなたは言う

遠くの景色が色あせて見えるのは
きっと目の錯覚ではないと

まるで自然と一体になれたなら
まるで自然の一部のように感じられることが
言葉でならべられるほど容易ではないと
たぶんお互いが知っている

けれど
あなたは確かな口ぶりで
そっと笑みさえ浮かべながら言う

そうやっていつの間にか
くっきりと鮮明になるまで
ゆらゆらとゆらいで見える夏が

音も無く近づいているだけなのだと


自由詩 夏のゆらぎ Copyright ベンジャミン 2010-05-23 02:11:36
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