(自動扉の開く気配
夏の口が開き熱っぽい舌が僕をなめる
揺れる木漏れ日 吹き出す汗 シャツを流れる風
即興的に産まれたノイズ まぶしいタイル
葉の擦れ合う音 靴ひも 蝉の声はさらに重く
僕は詩人 僕は詩人 僕は詩人 僕は詩人 僕は
なにものにもなれていない。)
図書館へ続く道 蝉の声 駐車場に植えられたツツジの緑
車両通行止めの錆びた看板 自転車 駐輪スペースの屋根
迫り出した桜の枝 モザイク状の木漏れ日 風が擦れる音
自動扉が開く
冷気がまとわりつく
サン=サーンスの「動物の謝肉祭」を視聴する
彼の生涯をNHKで見たとき
ヘッセに自分をだぶらせたときと同じくらいの揺れがあった
どこかすわりのわるいじんせい
「水族館」の鉄琴が水面を揺さぶり光を乱反射させる
「化石」に埋もれたきらきら星は遠いこの国の子供たちも歌えます
そして計算されて作られた貴方の楽曲は
あまり知られることなく ひっそりと棚に収まっています
知らず涙が出ていた
ガラス一枚隔てた遠い国の蝉の声が
重力となり 作り物のように揺らいで 僕を押さえつけていた。