五月にさまよう
まどろむ海月






五月の渚を
散歩する白い幽霊

恋人の笑顔で振り返って
消え去る

 現実ではありえなかった情景に
 こんなにも度々顕われ
 胸を痛ませる




カモメは滑ってゆく
風の大きなうねりを
淡い化粧の水平線
 やわらかな肌の感触
 そして鼓動

 打ち寄せる水色に
 白い足を伸ばして
 君の微笑み
  ほほえみ
  曲線をたどる指
  微かに開き
  潤んだ調べに
  反応する突然の
  フォルテ


  波は繰り返し

  くりかえし 重なって

  かさなって 寄せて

  深く ふかく 





 けだるい砂を踏みながら
 細いウエストに
 手を伸ばせば
 傾けられた
 髪の匂ひ


 そんなとき
 少年の日の
 草原を
 駆けた思い出さえ
 錯誤され
 君と二人だった
 気がして








面影に誘われ

彷徨う日

五月の潮風に独り

わが身を抱きしめ

このまま透明になれるならと

切に 思うのです













自由詩 五月にさまよう Copyright まどろむ海月 2010-05-22 18:19:10
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