全手動一行物語(61〜70)
クローバー
61
誕生パーティ、彼女がホールのケーキを切り分けると、集まったボーイフレンドたちの支持率が見て取れた。
62
目的地への案内板が「↓」であったので、スコップを探そう。
63
形見わけ、故人の押入から見つかったカセットテープを再生すると、君を忘れない、が流れ始めた。
64
ふたつ目の携帯の知っている秘密が、食卓の上でおいしそうな湯気を上げている。
65
左右に顔を振りながら鏡をのぞき込むと、徐々にズレていき、そこに写る顔は実際の顔より少しずつ幼くなっていく。
66
三ツ星レストランは、オリオンの腰。
67
きのことほうれん草は、ある一定の世界において非常に強力な栄養源であるため、スポーツ協会で禁止薬物に指定された。
68
仄かな明かりの中でしか文字が見えないインクが開発されたため、恋文がまた再び流行し始めた。
69
不安を商品として売り出すと、プレゼント用として飛ぶように売れた。
70
人類が車いすを発明したため、スフィンクスは口を閉ざした。