メロディ / ****'04
小野 一縷




重油が雲のように流れうねる
粘液質の眠りの底に響いて届く
何色かの鐘の音色に共鳴する
筋肉繊維の無数の弦が共震し
開かれる眩暈と明晰の間の扉


甘く緩く脊髄を対流する
胸の鼓動の裏のリズムの熱に合わせて震える
皮肉が汗腺から陽炎のように立ち昇らせる
狼煙は限りなく透明に近い何色かで絡み合いながら上昇する


金属に穴を開けるオイル塗れのドリル
金属的に! 硬質に! 緩やかに! 温く! 生々しく!
意識を永く深く掘り下げる
ボーリング重機の尖端の進行の為のマーチ
激しく 速く 鋭く 不安定に 
回転するターンテーブルから零れる
摩擦熱が打つテンポは乾いた音で刻まれる時間の進行を自由に操る
上下左右に 早く 遅く 
急いで待つ


そう
まるで独りきりの 恋人の心のように 
揺れながら

ぼくは 恋がしたい

小さなメロディに
心を打たれた時の眩しさ
忘れずにいたいんだ 

ああ
思い出への扉が 今 開いたよ

けれど
踏み出す為の心があれば
その強さの芯に押されて
扉は いつだって 開くんだ

知っているよ 

ばかだね ぼくは 

いつも 酔っ払って 

廻り道ばかり しているよ





自由詩 メロディ / ****'04 Copyright 小野 一縷 2010-05-21 05:33:46
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