ヒキナギの子
砂木

朝起きて 台所のブラインドを開けると
猫が 物陰に隠れて
つたの絡まる切られた木の上の方を見ている
そこには ヒキナギのつがいが
巣をはぐくんでいるのだ
が いつもはもう チチチとさえずるのに
なにもきこえないのは
昨日 木に登った猫に仰天して逃げて
逃げ切れなかった子を
噛まれたからなのだ
子はもう いないからなのだ
猫は噛んでも食べなかった
空腹なのだ 朝

チチチ どこかでさえずる声がする
みそ汁の具の皮をむきながら
何を食べようとしているのだろう
私の指は



自由詩 ヒキナギの子 Copyright 砂木 2010-05-20 22:40:30
notebook Home 戻る  過去 未来