チーズケーキ
かんな
色濃い恋の一ページをめくったなら
淡白な秘め事が見つかったりして
季節はいつも密やかに熱を帯びていくようで
バスに揺られて早十分、降り立つと見知らぬ土地
あなたの匂いを探してみるけれど
急勾配の階段の先に少し古ぼけた扉をガチャリ
「おじゃまします」と丁寧に言ったものの
あなたの部屋はどこか懐かしくて思い出を探している
ひとしきり荷物を片付けると何か言い訳をしたくなる
何も言えなくなるとカーペットに目を向ける
あなたの温もりが懐かしいから
抱き合う意味を探してあちこちに視線を向ける
ベッドの片隅に見つけた
枕元にリラックマのハートの置物があって笑ってしまう
お姫さまだっこの距離についていつだかあなたは語っていた
愛撫がわたしの身体を撫で回す行為だというのなら
きっとわたしの内には愛があるんだろう
体を幾度も重ねればきっとお互いの味がわかる
舌でなめあう肌の感触は汗で少ししょっぱい
コンビニエンスで愛を持ち合わせる行為は出来やしないから
生まれ落ちてからのすべての日付をめくって
あなたの存在ごと抱きしめてしまおう
しめつけるわたしの中をあなたがつらぬいて
必死に背中に爪を立てる癖を身体ごと覚えている
余韻に浸りながら語ることはなくて
ふたりでチーズケーキを食べながら
あなたの入れたブラックのコーヒーをすする
ふたりってことばは繋がらないと使えないかもしれないね