チーズケーキ
かんな


色濃い恋の一ページをめくったなら
淡白な秘め事が見つかったりして
季節はいつも密やかに熱を帯びていくようで

バスに揺られて早十分、降り立つと見知らぬ土地
あなたの匂いを探してみるけれど
急勾配の階段の先に少し古ぼけた扉をガチャリ

「おじゃまします」と丁寧に言ったものの
あなたの部屋はどこか懐かしくて思い出を探している
ひとしきり荷物を片付けると何か言い訳をしたくなる

何も言えなくなるとカーペットに目を向ける
あなたの温もりが懐かしいから
抱き合う意味を探してあちこちに視線を向ける

ベッドの片隅に見つけた
枕元にリラックマのハートの置物があって笑ってしまう
お姫さまだっこの距離についていつだかあなたは語っていた

愛撫がわたしの身体を撫で回す行為だというのなら
きっとわたしの内には愛があるんだろう
体を幾度も重ねればきっとお互いの味がわかる

舌でなめあう肌の感触は汗で少ししょっぱい
コンビニエンスで愛を持ち合わせる行為は出来やしないから
生まれ落ちてからのすべての日付をめくって

あなたの存在ごと抱きしめてしまおう
しめつけるわたしの中をあなたがつらぬいて
必死に背中に爪を立てる癖を身体ごと覚えている

余韻に浸りながら語ることはなくて
ふたりでチーズケーキを食べながら
あなたの入れたブラックのコーヒーをすする

ふたりってことばは繋がらないと使えないかもしれないね




自由詩 チーズケーキ Copyright かんな 2010-05-19 19:13:57
notebook Home