革命家はいらない
高梁サトル
綺羅星の王冠を眺めながら
骨のようにかたい胡桃をほうばる
失楽園からの贈物に
境目のない儚い理想を夢見ながら
昨日の怒りを
今日の喜びとして享受して
往ったり戻ったりする荒野の
彼方で青鷺の鳴き声を聞きながら
目覚めては存在しない指先の
輪郭を眺めては安心する
薄情な朝陽が黒星病を照らす残酷さに
不屈の魂を育てることを決意して
世界の果てでも見てきたような耳元で囁く
あやふやな信仰を抱えた過去を戒める呪文
「がんじがらめの愛にはスペインの長靴を」
アイシテルが聴こえない革命家ならいらない
孤独な原始細胞が歌う葬送曲
夜空を仰いで涙できるなら他に何を望む
欲望の先の果てのない闇か
戦士の鎧に刻まれた死神の刻印が疼くのか
地を焼き尽くすその火の吐息で滅ぼしたいものは
おぞましき細胞
膨張しては消滅してゆく
それでもおまえは
泣いて縋る者さえ退け血を流す
自らの棺桶さえ始末できないくせに
声高に革命を謳い剣を振り翳す