猫と灰蛾
木立 悟
午後に目覚めた双子の猫が
雨のむこうのはばたきを見ていた
夢の音から目をそらし
見つめた先にはばたきはあった
はばたきは薄く光を帯びていた
ゆっくりと近づく別の午後のようだった
双つの瞳は思い出していた
雨から雨が降りつづける日の
雨のむこうが見えない午後に
声を持たずに生まれたことを
たどりついたはばたき
足元を濡らす小さな息
見えない羽を歩む空の
声と言葉に照らされる水
双子と灰蛾は午後を見ていた
飛び去る雨の行方を見ていた
自由詩
猫と灰蛾
Copyright
木立 悟
2003-10-07 20:46:30