モーニング・モーニング
吉田ぐんじょう


からだじゅうの隙間という隙間に
硝子の欠片を
ぎりぎりと押し込まれているような気がして
目が覚めた
いつの季節でも
朝の光は鋭く皮膚を切り裂いてくる
光が当たって切れてしまったところに
絆創膏を貼った
夜にきちんとカーテンを閉めることを
忘れがちなわたしは
いつだって
どこもかしこも絆創膏だらけだ

まばたきをすると
眼の中に入ってしまった
光のかけらがいくつか
かろかろと畳の上へ落ちた


窓を開けて空をながめる
注意して眼を凝らすと
朝の空の上のほうには
夜色をした
重たそうな幕が上がっているのが見える
きっと朝になったらあの幕を上げ
夜になったら幕を下げる
そういう仕事をするひとがいるに違いないと思う


今日は燃えるごみの日だ
ということを思い出したので
ごみの袋を手に提げ
サンダルを突っかけて
ぼんやりと階段を下りる

路上へ出ると
夜の役目を終えた幽霊たちが
透けた体でぞろぞろと
あちら側へ帰ってゆくところだった

ぼんやりしていると連れて行かれてしまうので
そそくさとごみを捨てて部屋へ戻る
ドアを閉める前に背後を確認すると
知らないうちに
小さい女の子の幽霊がついてきていたので
懇々と説得して帰ってもらった


着替えるために服を脱ぐ
胸のところに
包丁がつきたてられている
ああそういえば夕べは
刺し殺される夢を見たんだっけな
と思いながら包丁を抜き
台所で洗って拭いてから
食器棚の引き出しへおさめる

殺される夢を見ることが多いので
ここの引き出しには
包丁をはじめ
何種類もの凶器が放り込まれている

血が止まらないがいつものことだ
晩までには治るだろう



自由詩 モーニング・モーニング Copyright 吉田ぐんじょう 2010-05-17 06:50:55
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