The Return of Pan / ****'04
小野 一縷



山麓 冷たく 響く
小川の せせらぎ 凍らせる 鳴声
霞んで 透けた 紫 朝の大気
止まない 一律の 音を含んだ 風の波
湧いて弾ける音符 空気の震動
漣打つ 潤んだ瞳孔 覆う 生臭いヴェール 
シルクに似た 滑らかな悪寒
木霊する笛の音 痺れる唇

狂牛病のパン リュート吹きながら
丘 駆け下り 草原から 町へ
殺処理される宿命 身籠った半神 奏でる旋律
羊や鶏共が発情する その音色
牛や豚共が狂喜する その音色
畜生共に 人々つられ 踊らされ
奇声狂笑陶酔恍惚絶頂
汗 涙 涎 精液 鼻汁 塗れて 奇怪なステップ
足元から 糞尿混じる 汚泥の飛沫 輝く

この町だけじゃない
愛情を注いで 大事に育てた
可愛い畜生どもを 美味しく平らげる 平穏
たっぷり愛で育んだ だから 不味い訳がない
では 我が子は? 

-- きっと絶品 --


神界へ 逃げ遅れたパン 
一人 町外れ 屠殺場へ 蹄ある足 歩いて 
笛の音 転がし 踵で 拍子
誰が為に 奏でる?

---- 亡き畜生の為の パヴァーヌ ---








自由詩 The Return of Pan / ****'04 Copyright 小野 一縷 2010-05-16 22:22:11
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