夜舟
杳
あたし
もうわすれはじめている
あなたのこと
おもいだすのは
決まって夜の淵
塞げないままの場所
まだひんやりとして
居心地がいいの?
とうになくしたゆびを
いたずらにほしがって
あたしはまぼろしを
かさねすぎたようです
なにひとつ
かたちはないけれど
喩えばあたしは
夜の淵を漕いでいます
ここはひんやりとして
居心地がいいの
手紙は途中までも
書き切れずに
唯一の形となりました
自由詩
夜舟
Copyright
杳
2010-05-16 22:13:50