非生存に思いをめぐらせて
石川敬大




 アウストラロピテクス〜はるかに
 ホモ・エレクトス〜さらに

 ひととひととを分かつ外的要因によって
 踏み出す一歩その一歩の歩幅の違いが決定的だとして
 ここまで
 歩いてきたのだから
 分けへだてる空間を育てるのではなく
 人工的な構造物によって埋め合わせてきたのだから
 もはや、どこで果てようとそれほどの違いはないのではないか

 先に行ったネアンデルタール人は砂に埋もれて
 アフリカの平原にとどまったものは
 ひとの始祖になって地球上にひろく満ちた
 われわれは同一種属なのでR


 あらゆる一歩はみることからはじまったはずだ
 耳をそばだてることからはじまったはずだ


 そだってくる感情を聴いている
 風
 または風紋
 あるいは水の、波紋の
 パターン化した日常をなぞる
 と、読めてくる
 白骨の
 蔓の尖端の感覚もよみがえってくる


 だれもが帰るのだから
 寸前にどんな石を対置させても空しい


 秋びんを充填して
 春びんを解放して
 ぎりぎりの端の箸に立つ水として
 充溢感は満たされているだろうか

     *

 チンパンジーが
 沈む夕日をみていた
 その目は
 その表情は
 なぜか母性のように慈愛にみちていたのでR







自由詩 非生存に思いをめぐらせて Copyright 石川敬大 2010-05-16 15:50:52
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