図書室の窓辺から
ベンジャミン
午後三時
初夏の森は緑の海
風に揺れる光が跳ねている
ひらいたままの図鑑
次のページがめくられるのを待っている
外の景色に気をとられて
どこまで見ていたのか忘れてしまった
図書室にはたくさんの本があるから
絵や文字に溺れてしまいそうになる
まるで海
砂粒ほどの言葉しか知らないから
どれだけたくさん拾い集めても
海に浮かぶ島にはならない
だから貝殻みたいな白いノートに
いくつかの言葉を書いて浮かべる
たとえ何処にも届かずに
海の藻屑になったとしても
書いた言葉だけは
ずっとこの世界を漂っていてほしい