穴ぼこだらけのレモン色
吉岡ペペロ

ユキオに乳房を噛まれるのをヨシミは歯で叩かれているように感じていた
部屋の窓からのぞく欠けた月を見つめていたらじぶんが死ぬとしたら地球でなんだと思った
そしてなんだか深い愛情をヨシミはじぶんのなかに見つけるのだった

カワバタはいまどうしているのだろう

いまじぶんがいる深い愛情のなかにカワバタにもユキオにも来てもらいたかった
ヨシミはつぶやいた

こうやって休みの日には会えるし、ひとりごとみたいにメールもできて、声も聞けるでしょ、あたしたち、地球で死ねるから、しあわせだよ、

カーテンが光を吸っていた
それが外灯なのか月の光なのか分からなかった
その蒼いレモン色の光を見つめていたらユキオがふとんをはいでまた乳房を歯で叩いてきた

朝起きるとヨシミは旅行の朝を感じた
午前の弱光がヨシミの気持ちを浮きたたせた

打ちにいこうか、

ここでもやっぱりそうなるか、

ユキオとはパチンコによくいく
あきらかに勝っているのはヨシミの方だった
ほかにもカップルで来ている客は多い
だいたいが女の子のほうが調子が良さそうだった

打っていてもきょうのユキオはどこかうわのそらだった
いつもは性的な視線を手にあててくるのにきょうは違うようだった
手を見つめられているとヨシミはいつも乳房のさきが見えないベルトで締められているような感じになる
きょうはそれとは違って手が穴ぼこだらけになったような気がする

パチンコをでてユキオがうどんに連れていってくれた
あまりの安さとおでんにヨシミは興奮した
この地でまだ一週間も暮らしてないくせにユキオはうどんを愛しているようだった
ヨシミがうどんを食べるのをさっきの視線で見つめるユキオ

うどんはすこし黄身いろがかっていた
ヨシミはそれをさびしいレモン色だと思った

そんなに見つめられると穴ぼこみたいになっちゃうじゃない、

でもユキオの遠い目に見つめられているとヨシミはそう言うのをやめていた
穴ぼこだらけのレモン色、じぶんのことをそう思った




自由詩 穴ぼこだらけのレモン色 Copyright 吉岡ペペロ 2010-05-12 13:06:40
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