知覚する嬰児
within
眠れずに
話し続けて窓から見えた白い月
集合場所は明かされぬ森の中
獣達は眠らない
獣のような人間も眠らない
人間もまた獣のように目を光らせる
夜にメスを入れると
ひとつの
卵子が落ちてきた
白々と
明けてきた朝の
精子が包み込む
汚れた下着を
着替えて
透明な殻を残し
新しい巣穴を
探す
永久凍土の中で
ずっとラップを歌い続けて
終わらないリリックを
海鳴りのリズムに乗せて戦い続けていた
スーパーの角に立つ白い遍路に
並んでみたくて近付いても
違う匂いに話しかけることができない
彼に付き添う者が拒絶する
若者も
老人も
渇いた土地に
井戸を掘り
直線で
区切られた
臨死の間際
を
丁寧に
拭う
臨月の太陽が
地平線で膨らみ
胎児の泣き声が
羊水を震わせ
母の憂いに
新しい数字が与えられる
地中に
張り巡らされている根が
腐らない
理由も知らずに
泣き出した
少年を
姉が抱き寄せる
鼻腔をくすぐる匂いが
人ではない物であった頃の
記憶を揺り返す