夜めぐる夜 Ⅲ
木立 悟
降る暮れの火と刺さる樹と
青と蒼と青と蒼
うなずくように
言葉なくす灯
花間のなかの蕭索
舌の上の山茶花
冠 冠
手に手をわたる
影 にじむ影
海の入口へ向かう脚
見えない月の
軋みと光
灰の階段
ほどける冠
草と実と雨
手のひらこぼれ
霧や未明
昇る樹をすぎ
着くことをすぎ
何もかもをすぎ
魂の葉 滴の警笛
時計を映した泡の蝶
とどかぬ花を
とどけゆく蝶
あやまちに晴れ
あやまちに曇る
鏡ひろう砂
忘れる砂
道があり 海に消える
手をつなぐ影の影を越え
光は水に門を描く
かなえられない夜を描く